【掲載日】2017年04月25日(火)
発行日 | 2017年04月発行 |
Practica「知る」Vol.4では、「医療安全」をテーマとした改善事例を紹介します。
報告いただいた病院の種別や役割は様々ですが、具体的な事例には、皆様の病院でも実践できるヒントがあるかもしれません。ぜひ参考にしてください。
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※ Practica「考える」では、評価項目の考え方のヒントを紹介します。併せてご活用ください。
※ 本冊子の情報は、認定の判定基準を示すものではありません。
※ 一部表記を「病院機能評価 機能種別版評価項目<3rdG:Ver.1.1> 解説集」に則り、趣旨を損ねない範囲で改変させていただいております。
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事例1:エンジェルカード
【受審時の機能種別】
一般病院1(100床以上)
【提出部署/委員会】
地域医療連携室 /満足度向上委員会
【活動の背景・きっかけ】
常日頃、業務の中で職場の仲間が行った素晴らしい行動や、してもらって感謝したことなどを全職員に知ってもらえる場を設けられれば、互いに感謝の気持ちを伝えることができ、他の職員もそれを知ることでモチベーションを高めたり、自身のお手本とすることができるのではと考え、運用を開始した。
運用開始当初は投稿用のカードと投稿専用ボックスが院内スタッフルームや食堂など各箇所に配置されていたため、名称は「エンジェルカード」となっている。
【活動の内容・成果】
<対象>
当院に従事するすべての職員
<活動内容>
職種、役職は問わず、互いに「良い、素晴らしい」と感じた他の職員の行動について評価・報告し合う(ポジティブな評価・報告)。
報告・閲覧の方法は、現在は法人内グループウェア専用ページより、投稿、閲覧ができる。いつでも個人の権限で投稿・閲覧が可能であり、投稿については自由・任意である。また、投稿者は匿名での投稿でもよい。
年度末に、年度を通して投稿されたものの中から、その年の病院の目標や時事的なトピックスなどをベースに、満足度向上委員会が主導で「エンジェル大賞」となる投稿をピックアップし、その投稿された職員を全職員が集まる場(毎年年度末に行われるQC大会・新人歓迎会)で表彰する。年によって表彰される投稿数は異なるが「個人表彰」と「部署表彰」で行われることが多い。
【工夫・アピールポイント】
誰でもいつでも気軽に参加できるよう、院内ネットワークよりグループウェアで参加できるようにしている。
取り組みとしては目立たないものかもしれないが、全職員の前で表彰できる場を設け、取り組みの浸透を図っている。
最近では、院内に入っている外部業者の取り組みや行動についての投稿もあり、院内スタッフに留まらず、気持ちの良い行動を相互評価する自由な仕組みが機能している。
【今後の課題】
エンジェル大賞表彰式後数ヶ月は投稿数も多くなる傾向があるが、年度下半期になると職員のエンジェルカードに対する意識が遠のくのか、あまり投稿数が増えない傾向がある。
エンジェル大賞の表彰は年度末に一度となっているが、「上半期」「下半期」「年間」や「月間」などの形で定期的に職員が集まる場で発表、表彰などできるとよりエンジェルカードの取り組みの活性化が図れるかと考え、検討中である。
(提出月:2015年5月)
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事例2:重症例に対するラウンドの実施
【受審時の機能種別】
リハビリテーション病院(200床以上)
【提出部署/委員会】
リハビリテーション部
【活動の背景・きっかけ】
回復期リハビリテーション病棟では、より重症な患者を受け入れ、改善を図り、在宅復帰への支援を行うことがその使命として強調されてきた。この数年、入院時のADLレベルが低く改善に難渋する症例、経管栄養、気管切開症例など、対応が難しい重症例の比率が高まった。一方、回復期リハビリテーション病棟では経験の浅いセラピストの比率が高く、評価、方向性の決定、リハ介入がスムーズに行われないことも散見するようになった。このようなセラピスト個人の経験値の低さを補い、回リハ回復期リハビリテーション病棟全体の質の向上を図るために、多職種による各種ラウンドを行った。
【活動の内容・成果】
各ラウンドは医師、セラピスト(管理職)、病棟専従セラピスト(病棟専従)、看護師によって実施され、問題点の把握、方向性の決定、各職種の介入ポイント、観察強化ポイントの確認、担当者への指導などが行われた。
(1)ADL重症者ラウンド
対象:入院時日常生活機能評価10点以上の患者
ラウンド実施者:医師、セラピスト(管理職)、セラピスト(病棟専従)、病棟看護師
期間・実施頻度:現在2病棟で実施
成果:日常生活機能評価4点以上改善
平成26年度57.5%→平成26年度64.1%
成果発表:2013リハビリテーション・ケア合同研究大会 千葉
2014リハビリテーション・ケア合同研究大会IN長﨑
(2)気管切開ラウンド
対象:気管切開し、カニューレを装着している患者
ラウンド実施者:医師、セラピスト(管理職)、病棟看護師
期間・実施頻度:2014年5月〜
新患ラウンド:対象患者入院時点(随時)、定期ラウンド(月1回)
成果:現在12症例実施、カニューレ抜去率83%、
(ラウンド開始前2012年度~2013年度 抜去率58%)
【工夫・アピールポイント】
(1)ADLラウンド
集中的に介入すべきADL課題をピクトグラムを使ってベッドサイドに掲示することで、担当セラピストのみならず、代行セラピスト、看護、介護スタッフも対応すべきADLを意識化でき、介入チャンスを増加させることができた。
(2)気管切開ラウンド
症例の絶対数は少ないものの、対応は難しいため、担当するスタッフにより対応のバラツキが出やすかった。これに対してラウンド実施者を医師1名、セラピスト1名を固定化することで抜去までの流れを標準化できた。また、ラウンドを担当者がリハビリテーションを実施する時間にあわせることで、その場での方向性決定、伝達、指導が効率的に行えた。
【今後の課題】
当院は回復期リハビリテーション病棟を4病棟擁しており、今回のラウンドも病棟単位で行なっているものが多い。いくつかの病棟で実施し、効果をあげた取り組みを順次他病棟へ拡張してくようにすることも今後の課題である。また、重症ADL、気管切開などと並び、高次脳機能障害が重度にみられリハビリテーション拒否、介護拒否、apathyなどが前景に出ている症例も日常臨床では難渋する症例である。このようなタイプの患者に対してのラウンドも今後検討していきたい。
(提出月:2015年5月)
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事例3:身体抑制に関するマニュアル改訂
【受審時の機能種別】
一般病院2(500床以上)
【提出部署/委員会】
医療評価委員会
【活動の背景・きっかけ】
身体抑制は患者・家族に説明し、同意を得て行っており、抑制中も解除に向けてのカンファレンスを実践している。病院機能評価受審時に、より詳細な説明内容と、解除に向けてのカンファレンスの強化を求められた。
【活動の内容・成果】
病院機能評価受審時の指摘事項について、医療安全対策室長に説明し、説明・同意書、マニュアルの改訂を依頼した。
現在当院で行っている抑制の内容の明記、時間外等に身体抑制を開始しなければならない場合のルール、抑制中の解除に向けてのカンファレンスの実践や記録等のマニュアルをより詳細に記載することとした。カンファレンスの実践については、看護部の倫理委員会による監査も取り入れることとした。
現在、医療評価委員会と医療安全委員会で書類の確認最終段階であり、近日中に運用開始できる予定である。
【工夫・アピールポイント】
質改善に関する事項について、組織横断的に検討する権限を有する医療評価委員会が中心となり、医療安全委員会と現場で実践できる内容の検討を行った。
(提出月:2015年5月)
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事例4:エラー防止カードの作成 ~情報共有と伝達エラーを防止するために
【受審時の機能種別】
リハビリテーション病院(200床以上)
【提出部署/委員会】
一般病棟 / 医療安全委員会看護部
【活動の背景・きっかけ】
業務を行ううえで作業を中断しなくてはいけない時、第三者が作業中断中であることが理解されず、業務完了との誤った判断をしてヒヤッとすることがあった。そこで、誰にでも理解され、作業に取り掛かった人が、最後までその業務に責任を持ち業務遂行する必要性を感じ、情報共有と伝達エラー防止につながる工夫を考えるきっかけとなった。
【活動の内容・成果】
2012年に計画していた「まかせてカード」の本格的な運用を開始した。 業務の途中でその場を離れることがあっても、「まかせてカード」を使用することで、作業の途中であることや、誰が作業中であるのかが一目瞭然となり、最後までその業務に責任を持ち完結できるようになっている。看護師全員がカードを携帯できるサイズとしたことで、活用しやすく、エラー防止に成果が出ている。
【工夫・アピールポイント】
「まかせてカード」を携帯型とし、自分が作業を中断するとことが誰にでも分かるようにした。
表面には、氏名と「まかせて!私がやります」と記載し、裏面には、
① 正しい薬剤ですか?
② 正しい量ですか?
③ 正しい方法ですか?
④ 正しい時間ですか?
⑤ 正しい患者ですか?
と記載することで、自己の業務内容の再確認を促し、エラー防止につなげた。
【今後の課題】
(提出月:2015年5月)
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事例5:身体拘束・抑制と転倒対策フロー図のバージョンアップおよび監査の仕組み
【受審時の機能種別】
リハビリテーション病院(200床以上)
【提出部署/委員会】
看護部/医療安全管理委員会
【活動の背景・きっかけ】
回復期リハビリテーション病棟では、一人で移乗動作をする可能性のある人に対して基本的に「4点柵」を使用していた。患者権利を守る観点より4点柵は身体拘束とみなされるため、本人の活動能力に合わせた環境(ベッド柵の設置)が提供できるためのフロー図を担当各位とともに更新した。
【活動の内容・成果】
ベッド柵を乗り越えての転落事故をきっかけに、4点柵の使い方・使用数について検証。 (2014年4月時点では、病棟の半数の患者が4点柵にしていた) 患者権利を守る観点から討議を重ねた結果、基本的な対応策として4点柵設置から開始するのではなく、まずは3点柵設置を基本とすることを意識付け、安全面・機能面から必要最小限の身体抑制となるよう考慮し、転倒対策フロー図を更新した。3点柵を有効に活用するためには、どのような道具との組み合わせが効果的であるか検証し、必要な物品・台数を医療安全委員会にて答申。4点柵設置の対象数の減少と共に、回リハ病棟への離床センサー・衝撃吸収マット数も充足されるに至った。 2015年2月現在 4点柵は10人(20人から10人へ減少)となっている。
【工夫・アピールポイント】
患者の安全を守るための対策として活用していた「4点柵設置」が、身体抑制の観点からみると患者の権利を侵害することにつながるため、「安全」をとるか「権利」をとるか、その狭間で設置基準の設定することに担当各位が苦心した。 今回、患者の能力に応じて転倒対策のフロー図を更新することより、基本的な考え方として、4点柵設置から考えるのではなく、3点柵の活用から考えるように意識付けされた。 患者の「安全」と「権利」、その両立から見た対応フローとなった。
(提出月:2015年5月)
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Practica「知る」Vol.5 では、引き続き「医療安全」をテーマに改善事例を紹介します。
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